この研修では自分では手に取らなかったような本が配付されるんだけど、今回のビューティフル・カンパニー 市場発の経営戦略も興味深く読ませてもらった。
著者は嶋口充輝(しまぐちみつあき)氏で、法政や慶応の教授や、日本マーケティング協会の理事長も務めておられる方。
本書は単純な海外のマーケティング理論の翻訳本では無い。 日本という環境、それを取り巻くグローバルな環境の中で、これからの企業はどう振る舞い、歩んでゆくのかを語っている、言わば次世代のマーケティングの概念だ。
まず、本書の構成は下記の通り。
プロローグ 今、必要なパラダイム・チェインジ――顧客志向から顧客基点へ
- ビューティフル・カンパニーの時代へ
- マーケティング・アンビションという意図
- ビューティフル・カンパニーという概念
- 仕組み革新という仕掛け
- マーケティング・マッスルという形態
- 秩序ある社会責任のあり方
- 日本ならではのコーポレート・ガバナンス
- 委員会等設置会社と監査役設置会社
- 社外取締役に求められるものは
- Credoと呼ばれる企業経営の羅針盤
- 顧客満足をベースとしないCSRはあり得ない
- 関係性のマーケティングと千客万来のシステム
- 25%のお得意様が75%の利益を支える
- 顧客を愚直に信頼し、生涯価値を高める
- 競合に勝っても、顧客に愛されなければ意味がない
- 千客万来、門前市をなす仕組みを作る
- メーカー基点マーケティングの終焉の時代
- 3C分析はメーカーの独り善がりか?
- マネジメントとマーケティングの正しい関係
- 顧客志向ではなく、顧客基点で考える
- ブランドは受け手が作り上げるもの?
- サービスマーケティングの真実
- モノもまたサービスというとらえ方
- サービス品質の考え方
- サービス・エンカウンターの重要性
- ソリューションと顧客価値の正しい関係
- 顧客基点のマーケティングを語るべき頃
- 経営戦略としてのマーケティング
- 真のパラダイム・チェインジは、真後ろを向くこと
- 主人公はあなたではない
- デマンド・チェーンにビジネスモデルを変えられるか
エピローグ 商品の売り方は顧客が考える時代
マーケティングやマネジメントという概念は、始まりとしては特定の人、企業が成功するための経験則であったり、市場への先見性であったり、なぜあの会社、人は成功するのか? そうした疑問を突き詰めていくうちに見えてきた、その成功法則の普遍性を体系化してまとめる中で産まれた。
物量が少なかった時代はモノを提供することに価値があり、満ち足りてくれば品質を追求し、良いモノが当たり前になれば御客様が必要とするモノを調べて提供し、それらをより良く安く提供し、そして御客様自身でさえ気付かないニーズを発掘する、そんな時代になっている。
では、次にどんな変化が訪れるのか?
時代と共に移り変わっていく売れるモノを探す技術としてマーケティングという学問があったが、それはあくまでも提供者側が御客様を調べ、分析し、提供するための道具としてしか使われてこなかった。 顧客志向とは言ったものの、あくまでも企業側の立場に立った考え方、モノ作りのためのツールであった。
本書は、そうした現世代のマーケティングから、次世代のマーケティングへと変革を促している。 御客様とは「製品やサービスを購入する人、購入を決定する人」ではなく、「共に製品やサービスを作る人」という対象に変化しつつあると。
本書では経世済民という言葉がキーになる。
マジメで実直、良いモノ、安い価格で提供すれば良いのではなく、御客様と手と手を取り合って進む相思相愛の関係が築けるような、そんな新しい価値観を持った企業への変革が、これからの成功企業の主流となるのかもしれない。
あなたは変われるか。