軽快で、テンポ良く読み進められる。
事故により長期記憶ができなくなった「博士」と、
家政婦である「私」、その息子「ルート」との、
日々のふれあいを描いた、ほのぼのとした作品。
数学に人生を捧げ、事故で人間の重要な機能を
失ってしまった「博士」だが、野球の背番号や
誕生日に数学を使って深い意味を見出させ、
暖かく人間味溢れる存在として描かれている。
そうした短編集とも言える「博士」との日々の
物語を、「私」という縦糸が紡いで全体を形作る。
それは「博士」との出会いから、最後の日まで。
よく組み立てられていて、面白かった。