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さらば愛しき蛙よ

昨日の夜、蛙を近所の川に逃がしてきた。

その体長1cmほどの蛙は、隙あらば逃げだそうと虎視眈々と機会を狙っていたので、入れていた虫籠の蓋を開けた途端に元気よく、勢いよく飛び出していき、吸い込まれるように真っ暗な河原へと消えていった。

蛙が我が家に来たのは、あいつがまだオタマジャクシだった時だ。

学校や保育園の仲間達と共に、家族でキャンプに行ったあの日に、メダカとともに子供達が連れてきた真っ黒で大きなオタマジャクシ。

この夏の暑さもあってか、我が家の水槽は段々と動くものの姿が減ってきていたんだけれど、数日のうちに姿が見えなくなったメダカと違って、オタマジャクシはいつも元気に泳ぎ回っていた。

そのうち足が生えて、蛙のような姿に近づいていった時、オタマジャクシの姿も見えなくなってしまった。

ああ、残念。

夏の暑さで数が減ったとは言え、まだまだ我が家の水槽はエビが多いので、あっという間に掃除をしてくれる。

きっと、オタマジャクシも彼等のお世話になったに違いない。

そうして姿が見えなくなって数日、もうその存在すら忘れそうになっていた時に、風呂場で家族の叫び声が聞こえた。

行ってみると、そこには蛙が居た。

生まれ立てに近い大きさといい、近所に蛙が居るような環境でも無し、きっとこの蛙はあのオタマジャクシに違いない。

小さいくせに元気よく跳ね回る蛙を子供達が必死で捕まえて、川に逃がすために石とうっすらと水を入れた虫籠にとりあえず閉じ込めた。

熱帯魚の餌を与えられながら、蛙は川へと解放される週末を待ちわびていた。

今頃、蛙は何をしているんだろう。

他の生き物に食べられることなく、元気に生きているんだろうか。

キャンプ場で出会った大蛙のように、大きく育ってくれるだろうか。

まあ、居間にあった水槽から、遠く離れた風呂場まで、生まれ立てなのに果敢に旅をした蛙だ。

きっと強く生きていくんだろう。

さらば、愛しき蛙よ。

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