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【1992/10/6~9】列車は走るよどこまでも

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≪10/5   目次   10/11≫

列車は走る。

街から街へ、悠久の黄河、峻険なる山々、はてしなく続く段々畑。

その中国の大地を、2番目に安い硬臥という硬めのベッドの寝台車で移動する。 縦に3段の一区画6ベッド。 普通の外国人は盗難が多いので個室を選ぶし、もう少しお金を出して柔らかいベッドを選ぶんだろうけど、パッカーだから節約節約♪

黄河はその名の通り、やっぱり黄色い濁った水。 そのままでは飲めない水でも、農作物には恵みの水。 乾燥しているけれども肥沃な大地が続く。

場所によっては急峻な山々もあったりと、景色の変化もまあまああって、何とか暇は潰せている。

中国の水は、どこもそのままは飲めない硬水で、みんな沸かしてお茶にして飲む。 たいていは空き瓶を使って、お湯を入れたら茶葉を投入し、茶葉を唇で除けながらそのまま飲む。

慣れるまでは飲みづらいけど、ひまわりの種を食べるのと同様に、慣れると気にならない動作になる。

人々は常に優しく、ときに厳しく、隙を見せたら負けてしまう。 荷物はちゃんとしまっておかないと、すぐに小物なんかは無くなってしまう。 ボールペン、鉛筆なんかは、出せば出すだけ盗まれる感じ。

解放軍の人も多数乗っていた列車で、こんなコスプレしてみたりと、単調を覚悟した4日間は、意外なまでに充実している。

それにしても、中国の列車は本当に混沌としている。 お菓子の袋から箸袋、ゴミは何でも床へ投げ放題。 吸殻も、吐いた唾さえも床へ投げ放題で、もぅ何でも床へ放ってしまえ!って感じで皆が過ごしている。

適当にゴミが溜まれば、女性乗務員がちりとり片手に現れて、全部ぱぱ~っと集めて窓から放りだし、跡形も無く車外へと消し去ってくれる。 車窓の彼方へ飛び去っていくゴミ達と、その姿をかき消すような汽車の煙も、1日も過ごせば見慣れた車窓の風景になってくる。

時折、丸ごと段々畑になった山が連なっている光景を見かけて驚く。 家はそんなに建ってないから、少人数でここまで耕作してるんだろうけど、その人民パワーが凄い。 こんな耕し方をして、土地が痩せてしまわないのか?って不安になってくる。 水があってもなお赤茶けた色の目立つ大地だから、水が無ければ砂漠になってしまうんだろうな。

列車の中で過ごすために、「彼らはご飯に行ったのですか?」とか、生きていくという目的に偏った生活に欠かせない言葉だけが、記憶に刻まれていく。

この等級の列車に乗る外国人は少なかった(ほとんど居ない)ので、行き交う人々が話しかけてくるけど早口で何を言ってるのか分からないので筆談だ。 漢字による筆談は漢字パズルを解いているようで、そこで使ったボールペンは色々な人の筆談の手を渡るうちに行方不明になる。 本当に油断がならない。

夜になってやっと、喉を痛めそうな朝もやのようなタバコの煙が消える。 そして中国語の喧噪がやんで、ひっそりと静まりかえるのだ。

礫漠の彼方にある長城の西の果て、ここが嘉峪関だ。 風化し、崩れてゆく長城と対照的に最果ての砦はやけに新しい。 きっと、ここも観光名所として派手に飾り付けているんだろう。

でも、この何も無い瓦礫の砂漠の土地に、国を守るために長城を築いた人々が居たって考えると感動する。

大陸の歴史をもっと勉強しておけば良かったな。

 

さあ、終点までもうすぐだ。 この列車の旅を楽しもう。

 

 

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