漫然と見過ごしていたものの中に、宝の山があることに気がついてしまうからだ。 そして、自分達の商売の中に山のように潜む、売れない理由を見つけるようになるだろう。
地道に観察をし、膨大な観察結果から結論を紡ぎ出す文化人類学者が、その持てる観察能力 -そしておそらくは強靱な忍耐力も- をショッピングの分析に振り向けた結果、商売に携わるものであれば誰もが喉から手が出るほどに欲しがっていたもの、買い物を科学する学問、いや、商売が出来上がった。
ショッピングとはそも何ぞや? その一つの解が、この中にある。
第1部 ショッピングの科学の誕生
- こうして科学が生まれた
- 小売業者が知らないこと
第2部 ショッピングのメカニズム
- 入口と移行ゾーン―ショッピングの始まり
- 手の問題の重要性
- 看板や掲示板を有効利用するには
- 買い物客は人間で、人間らしく動きまわる
- 固定観念で販売することの危険性
第3部 ショッピングの統計的研究
- 男性と女性のショッピングの相違点
- 女性が小売店に求めるもの
- 老眼鏡にはまだ早い
- 子供の領分
第4部 ショッピングの力学
- 意思決定をつかさどる感覚的な要素
- 三つの要素
- 買い物客の評価の物差し―待ち時間
- 会計/包装にまつわる憂鬱
- マーチャンダイジングとは何か
第5部 ショッピングの文化
- インターネット
- ショッピングの科学、世界へ
- 世界につながる窓
- 結論
本書はとことん現場主義だ。 本当に見事なまでに。 だから圧倒的な説得力がある。 腑に落ちる。 読めば誰だってフィールド調査の重要性をとことん再認識できる。 フィールド調査のやりかた、視点も自然に頭に浮かぶようになる。
自分達は、自分達で思っているほどには、自分達のことを理解していない。 自分達の商売のなんたるかを理解していない。 もっと言えば、御客様のことを考えてはいるが理解していない。 その無意識の行動の中に、宝が、チャンスがあるというのに。
・・・いや、違うな。 それはそんな良いものじゃない。
そこにあるのは、唯一の生き延びる道。 光り輝く道。 複雑に絡み合った迷宮に射す一条の光だ。
私達は、結論にある次の言葉を肝に銘じるべきだろう。
脅威はどこからでもやってくる。 競争相手は同業者だけだと信じている商店主は、危険なほど視野が狭いと言わざるをえない。
そう、一歩間違えれば闇。 生き残るための道を歩くために、もっと御客様を理解しなきゃならない。 わかったつもりじゃなく、本当の意味でわかるために。 まさに御客様自身が気づかない何かを発見するために。
小売店の競争相手になるのは、消費者が時間と金を費やすもののすべてなのだ。
御意。 ひとりの消費者の財布はひとつ、そこを流れる時間もひとつだけなのだから。 椅子取りゲームで生き残るのは誰か、自分の代わりに椅子に座ろうとしているのは誰か。 それを見誤ると、誰もいないと思ってた椅子に、誰かかちゃっかりと座っているのかもしれない。 そして私達は座る椅子が無くなって退場となってしまうのだ。
同じ努力をするなら、より効果的な努力を。 本書はきっとその助けになる。
すごいよ、パコさん!
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